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2000~2010年代コロコロコミック傑作漫画5選

はじめに

好きな漫画の名作について語りたい。この手の話題でジャンプとかの作品についてはよく聞くが、コロコロコミックの漫画についてはほとんど語られない気がする。

たまに挙がることがあっても90年代とかの作品だったりで、その辺りは個人的に世代がずれているため話に入りにくい。

要は自分が当時読んでいた作品の話がしたいのである。

そんな訳で、今回は筆者が主に読んでいた2000~2010年の間に連載されていたコロコロ漫画の中で個人的に特に好きだった漫画を5作紹介する。

なお、ストーリー漫画に限定するものとし、ギャグ漫画等は5作から漏れたものと一緒に選外として最後に軽く紹介しようと思う。

 

(※ここから先に書かれていることは独自の見解が含まれます。)

 

1.コロッケ!

コロッケ!(1) (てんとう虫コミックス)

コロッケ!(1) (てんとう虫コミックス)

 

 2001年4月号から2006年11月号まで連載されていた作品。作者の樫本学ヴ先生は『学級王ヤマザキ』等で知られるヒットメーカーだが、個人的に樫本先生の作品といえばコレ。児童誌らしい、崩れず見やすい画力の高さが光る。『ぼくはガリレオ』も好きだった……。

願いを叶えるために「禁貨」を集める「バンカー」達の物語であり、主人公のコロッケは黒マントの男に殺された父を生き返らせるために戦う。ストーリー漫画はホビー関連のタイアップ作品が多いコロコロでは珍しい、完全オリジナルストーリーのバトル漫画。

ドラゴンボール的設定の影響もあってか、かなり人死にが多い漫画。作中死んだキャラはその後の展開で生き返ったり生き返らなかったりする。

ストーリーそのものは笑いあり・涙ありの王道もの。特に最終章の最終戦は今までの総決算ともいえる激アツ展開が繰り広げられる。ラストがいい。

バンカーサバイバル編における黒マントの男の正体や、ピザの斜塔編における裏バンカーサバイバルの主催者など、意外性のある展開が一つの魅力。キャラ同士のバトルにおいても度々意外なマッチアップがあり、勝敗も含め先の展開をかなり予想しにくく、読んでいて飽きさせない話の作り方をしている。ピザの斜塔編は特に展開が読めない。

全体的に必殺技の名前がキレキレなのも特徴。主人公のコロッケが使う「ハンバーグー」等は比較的音感と覚えやすさ重視のダサかっこいい系だが、リゾットの「108(ワンオーエイト)マシンガン」やプリンプリンの「恐怖の大王」は児童誌らしからぬネーミングセンスを誇る。個人的に好きなのは、ピロシキが使う、鋭利な氷塊を手のひらから出して攻撃する「ツンドラの接吻」。

余談だが、登場人物の名前が全て食べ物モチーフで統一されている。珍しい食べ物の名前をこれで知ったor覚えたという人はきっと多いはず。

なお、本作の完結から11年を経て、続編にあたる『コロッケ!BLACK LABEL』がコロコロアニキで現在連載している。「前作の終わり方からこんな話作る……?」と思わんでもない非情な展開が繰り広げられており、賛否はあるがこちらも目を離せない。

 

2.ドラベース ドラえもん超野球外伝

2000年9月号から2011年10月号まで連載されていた作品。作者のむぎわらしんたろう先生は今は亡き藤子・F・不二雄先生の弟子であり、立場的にもむぎわら先生にしか描けない作品と言える。現在でも映画ドラえもんの企画協力やコミカライズを描いていたりする凄い人。当たり前かもしれないが画力も非常に高い。

ドラえもん』と同一の世界観を舞台とし、22世紀で人間やロボットが野球で対決する物語。一話目にドラえもんもゲストキャラとして登場する。

ストーリーは主人公のクロえもん率いる弱小草野球チームが成長し、大会等でライバルチームと対決していく王道野球もの。WABC(ワールドアマチュアベースボールクラシック)編では、現実のWBC第一回大会の開催と連載時期が被っていたことも相まって物凄い盛り上がりを見せていた。

ドラえもん』本編で登場するひみつ道具が登場するのが魅力の一つで、試合中3つまで使用できるかたちで活躍する。また、『ドラえもん』含む藤子F作品が元ネタのキャラも出てきたりする(かのオシシ仮面も「グエーッ」という台詞と共に登場する)。

巨人の星』等の昔の野球漫画のような、現実ではあり得ない魔球や打法が登場するのも特徴。作中最大のライバルであるシロえもんが使用する、縦にジグザグと変化する「W(ホワイト)ボール」は特に有名。ライバルの魔球を如何に攻略するか、という点も重要な見せ場となっている。

ストーリー漫画としてはギャグの切れ味が非常に鋭く、小学生はもちろん、大人でも笑える描写が随所にある。ギャグの説明は難しいため、ここでは詳しく書かないが、とにかく勢いが良い。

なお、本作の完結の1年後に『新ドラベース』という続編も連載されていたが、こちらについては筆者は未履修。機会があれば読みたい。

 

3.デュエル・マスターズFE(ファイティングエッジ)

1999年5月号から現在も連載が続く漫画デュエルマスターズシリーズの第二部で、2005年4月号から2008年6月号まで連載されていた作品。作者の松本しげのぶ先生はもう長いことコロコロの第一線で描き続けており、「松本大先生」の愛称で親しまれている。演出・表現力がとにかく高い人。

『FE』は第一部の最終戦から一ヶ月後、主人公の切札勝舞が修行のためスペインへ発つところから始まり、かつてのデュエルマスター・ヤエサルがデュエルマスターの証を分け与えた7人の子供達を巡り、不亞家最強集団の「アフターR(レボリューション)」との戦いが激化していく。

この頃になると現実のデュエマそのもののカードプールが充実し、作中でも「ヘブンズゲート+シリウス」や「キングアルカディアス+スペルデルフィン」等のロマン込みのガチ戦法が見受けられるようになり、第一部から続くザキラとの因縁が収束するストーリー展開も合わさり、カード漫画・ストーリー漫画の両方の面において特に高いレベルで楽しめる。作中屈指のガチバトルである、白凰vsY(イエスマン)は必見。

「真のデュエリスト同士の戦いで負けると死ぬ」等、物騒な設定が多い本作だが『FE』も例に漏れず死人が出るほどシビアな世界観を繰り広げる(カードゲーム題材作品にはよくあること)。

演出レベルが非常に高く、黒城の壮絶な過去や、R(リッチ)とS(シズカ)の愛の行方など、大人が読んでも感情を揺さぶられる演出・展開が多い。エスメラルダの圧倒的ヒロイン力にも注目。

切札勝舞が主人公のストーリーは第三部にあたる『SX(スタークロス)』まで続き、第四部の『ビクトリー』以降は主人公が交代する。筆者は『ビクトリー』以降は未履修。機会があれば読みたい。

余談だが、連載期間が長いため作中の設定の矛盾や不自然な展開はそこそこ多い。大人の事情もあるだろうから仕方ないところではある。

なお、元々MtGのタイアップ漫画だったのを途中からデュエマに転向したことで有名な本作だが、MtGを使い続けるifギャグ漫画がコロコロアニキで連載されている(作者は松本先生ではない)。

 

4.ロックマンエグゼ

新装版 ロックマンエグゼ 01

新装版 ロックマンエグゼ 01

  • 作者:鷹岬 諒
  • 発売日: 2016/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

2001年2月号から2006年9月号まで連載されていた作品。GBAで出ていたゲーム『ロックマンエグゼ』シリーズの漫画版。多くのタイトルがある『ロックマン』シリーズだが、筆者の世代で『ロックマン』といえば『エグゼ』。『エグゼ』のコミカライズもいくつかあるが、コロコロの『エグゼ』といえばこの鷹岬諒先生。くっきりとしたシンプルなタッチでカッコいいもかわいいも自然に描き分ける、画力の高い人。

世界中の隅々にまでサイバーネットワークが張り巡らされ、あらゆることがコンピュータで管理された世界で、主人公の光熱斗とその『ネットナビ』であるロックマンがネット犯罪に立ち向かう物語。今ほどインターネットが普及していない2000年代初頭に時代を先取りしたともいえる『エグゼ』の世界観自体も魅力的なのだが、この辺りの話は漫画としての面白さの話では無いので割愛する。

基本的に原作ゲームの設定・要素に基づいたストーリーが展開されるが、オリジナル要素も上手く織り込まれているのが特徴。原作ファンからの評価も高い。

特に作中最大の敵であるフォルテについては原作以上に出番が増え、設定の掘り下げも為されており、熱斗ロックマンに次ぐ第三の主人公といって差し支えないほど魅力あふれる主要キャラとなっている。単行本に収録されている、フォルテ誕生の経緯を詳細に描いた読み切り『フォルテ~最強の証~』も必見。

余談だが、鷹岬先生のTwitterアカウントでは本作の裏話がたまに語られる。カーネルとセレナードの出会いを描いた小漫画も読めたりするので、気になる方は是非。pixivでも読める。

 

5.太陽少年ジャンゴ

太陽少年 ジャンゴ(1) (てんとう虫コミックス)

太陽少年 ジャンゴ(1) (てんとう虫コミックス)

 

2003年9月号から2007年7月号まで連載されていた作品。GBA及びニンテンドーDSで出ていたゲーム『ボクらの太陽』(以下、『ボクタイ』)シリーズの漫画版。作者のひじおか誠先生は本作以外にもタイアップで宣伝漫画やイラストをいくつも描いており、個人的に『ボクタイ』といえばこの人。

不気味な人外・怪獣的存在の表現は、コロコロの歴代漫画を探しても筆者の知る限り他に類を見ない、ある意味「コロコロらしくない」画風であり、極端な構図で描かれるスケールのデカい敵が放つ威圧感は特によくハマっている。ひじおか先生は映画ポケモンの『ギラティナと氷空の花束シェイミ』のコミカライズも描いており、そちらでも怪獣感あふれるギラティナが見られる。

不死の「アンデッド」に支配され闇に覆われた世界で、「太陽少年」としての力を持つ主人公のジャンゴが、世界に太陽を取り戻すために戦うダークファンタジー。ゲーム版『ボクタイ』を原作とする漫画ではあるが、ストーリーや設定、キャラの性格やビジュアルまで大幅に違い、原作ファンの間では賛否ある作品。

主人公の相棒である太陽の精霊・おてんこの武器化、字面の良い漢字溢れる必殺技等、特定の年頃に摂取すると影響を受けかねない要素が割とある。個人的に好きなのは、ドゥネイルが使う『繭唾卍固め』。

なお、ネタバレになってしまうが、コロコロという児童誌において悪堕ちヒロインという業の深い爆弾を投下した作品でもある。「性癖が歪んだ」との声も。

余談というか悲しい話だが、漫画単行本が長い間復刊していないためかAmazonでの値段がとんでもないことになっている。

 

選外

ここからは筆者が好きだったギャグ漫画や上記5作から漏れたストーリー漫画をそれぞれ軽く紹介する。

・『スーパーマリオくん』…1990年11月~。言わずと知れたギャグ漫画。コロコロのレジェンド。現在も連載中。筆者が読んでいたのはスーパーマリオサンシャイン編やペーパーマリオRPG編等。実はちゃんと原作ゲームストーリーに沿って話が進行したりするので、原作を知ってるとより楽しめたりする。

・『星のカービィ デデデでプププなものがたり』…1994年11月~2006年4月。ゲーム『星のカービィ』シリーズを原作としたギャグ漫画。筆者の世代でコロコロのカービィ漫画といえばコレ。コロコロでは珍しく、連載時期によって絵柄やキャラの性格等が大きく変わる漫画で、筆者が読んでいたのは綺麗なタッチが特徴の連載中期以降。連載終了に至るコロコロ編集の黒い噂があった本作だが、現在は否定されている。本誌連載終了から11年を経てコロコロアニキで描き下ろしが掲載され、翌々号から現在も連載中

・『ポケットモンスター』…1996年9月~2019年11月。いわゆる「穴久保版」と呼ばれるポケモンギャグ漫画。「ギエピー」で有名。筆者が読んでいたのは原作ゲームでいう金・銀~D・P辺りの内容。初期は原作ゲームの道筋に沿ってジムリーダーに挑むなど原作ゲームを踏襲した話が進行していたが、R・S編に登場したテッセンを最後にジムリーダーがほとんど登場しなくなりゲームと独立した話が増えていったのが個人的に残念。本誌連載は終了したが、コロコロアニキにて『アニキ編』として現在も連載中

・『K-1 ダイナマイト』…1999年3月~2002年2月。コロコロでは珍しい格闘技題材のバトル漫画。監修に当時の正道会館館長がついており、作中登場する格闘知識は割とガチ。骨折有・流血有と描写もコロコロとしてはかなりハード。男装女子という性癖を歪ませるキャラを投下したことで一部有名。

・『爆転シュート ベイブレード』…1999年9月~2004年7月。筆者の世代でベイブレードといったらこの漫画。画力が高く、ベイブレードのボディが一発で見分けがつくレベルの描き込み量が印象的。青龍・朱雀・白虎・玄武のいわゆる四神を本作で知ったという読者も多いのではなかろうか。この漫画にまんまと乗せられて筆者も当時ベイブレードを買った。

・『ポケットモンスター金・銀 ゴールデンボーイズ』…1999年11月~2001年9月。ポケモン金・銀を原作としたオリジナルストーリーで進行する漫画。原作とオリジナルの要素を上手く織り込んでおり、原作ファンからも評価が高い。事情は不明だがタンバシティ(5番目のジム)で突然連載が終了しており、今なお惜しむ声は少なくない。作者の斉藤むねお先生はポケモンのゲームやアニメのキャラデザインも担当しており、有名なのはエンテイライコウスイクン

・『音速バスター DANGUN弾』…2000年6月~2004年2月。タミヤが発売したホビーであるダンガンレーサーのタイアップ漫画。当時レース系ホビーとしてはミニ四駆の人気が強すぎたため現実のダンガンそのものの人気があまり出なかったという、不遇な面がある漫画。筆者は好きだった。作者のてしろぎたかし先生は『グランダー武蔵』の方が有名であろう。

・『筋肉番付 怪傑!金剛くん』…2001年8月~2002年9月。『SASUKE』等で知られるテレビ番組の『筋肉番付』シリーズのマスコットキャラクターである金剛くんを主人公とした漫画。実際の筋肉番付シリーズに登場する企画を基にしたアクション勝負をライバル達と繰り広げる。作者の大内水軍先生は画力が高く、映画ポケモンの『七夜の願い星ジラーチ』のコミカライズも描いているので気になればそちらもオススメ。GCで出ていたゲーム『ポケモンコロシアム』のコミカライズも描いていたがそちらは残念ながら単行本化されていない。

・『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』…2001年10月~2010年3月。言わずと知れた、コロコロが誇る不条理ギャグ漫画。小学生に圧倒的支持率を得ている一方、過度な下ネタや暴力的表現等、読む人を選ぶには選ぶ。ギャグとはいえコロコロとしては珍しくキャラがよく死ぬ。2010年3月号で最終回を迎えはしたが、『絶体絶命でんぢゃらすじーさん邪』、その次は『なんと!でんぢゃらすじーさん』と改題して中身はほぼ変わらない状態で翌号から連載しているので現在も連載中という認識で間違いは無い。なお、「でん『じ』ゃらす」ではない。筆者は間違えた。

・『B-伝説! バトルビーダマン』…2002年4月~2005年11月。タカラ(タカラトミー)が販売しているホビーであるビーダマンを題材にした漫画。『スーパービーダマン』の方が恐らく知名度は高いが、筆者の世代でビーダマンといえばこっち。ライバルと競い合い、そのライバルも仲間になっていく真っ当な少年漫画的王道ストーリー。最終的に作中の要素をほぼ全て回収して迎える大団円になるので読後感も非常に良い。

・『DUEL JACK』…2003年4月~2006年8月。一話完結方式で当時の新弾パックで登場したカードの解説をストーリー仕立てで行うデュエマ攻略漫画。デッキの組み方・マナカーブの概念の解説や、作中使用されたデッキのデッキレシピの公開など、コロコロの攻略漫画としてはなかなか実戦的でタメになる。

・『鉄魂!!ZOIDS核闘技』…2003年8月~2005年1月。コロコロではたまにある、ゾイドをモチーフにした漫画。ゾイドが生息する架空の惑星が舞台の作品が多い中、現代日本舞台でゾイドのプラモのモデリングを題材にしており、早組みやジオラマなどで対決する渋い展開が個人的に好みだった(途中からゾイドを操縦してバトルするようになるが……)。

・『ケシカスくん』…2004年6月~。消しゴムのケシカスくんを主人公としたギャグ漫画。児童漫画らしい下ネタはもちろんあるのだが、全体的にネタの調理の仕方が巧く、コントや漫才のような理のある笑いが多い印象。不条理ギャグの極致のような『でんぢゃらすじーさん』とはある意味真逆とも言える。現在も連載中

・『甲虫王者ムシキング~ザックの冒険編~』…2005年2月~2006年10月。かつて一世を風靡したカードアーケードゲーム甲虫王者ムシキング』をモチーフにした漫画。原作ゲームとは全く違う世界観で、主人公のザックとカブト丸が共に戦い成長していくオリジナルストーリーが展開される。画力も高く、筆者は好きだったが、別冊コロコロと並行連載されていたこの漫画は月刊コロコロ本誌だと物語途中から始まり物語途中で終わるため筆者はラストを知らない。いつかちゃんと読みたい。

・『推理の星くん』…2005年12月~2008年9月。コロコロでは珍しいミステリー漫画。あくまで児童誌であるが故か、作中登場するトリック等のツッコミどころは多いものの、演出が良いためそのまま読ませる力がある。コロコロにはあまりない暗めで落ち着きのある空気感が筆者は好きだった。

・『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール物語 ポケモンDP』…2006年10月~2009年9月。タイトルの通り『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』を原作とするポケモン漫画。ストーリーは原作ゲームの流れを踏襲しているが、オリジナル要素も織り込んでいる(特に終盤)。ポケモンに関しては原作ストーリーをなぞっている途中で連載終了してしまうパターンが多いコロコロでは珍しく、原作ストーリーの流れをほぼ描き切った貴重な作品。作者は前述の『DUEL JACK』の伊原しげかつ先生。

 

終わりに

コロコロコミックは児童誌だからと甘く見ている人は多いと思う(事実、児童向けに描かれているはずである)が、児童向けだからと言ってその作品の作者が児童を甘く見ている訳ではない。

寧ろ、児童向けに解りやすく明瞭に描かれた展開は、青年誌等で掲載される漫画よりも作品そのものへの理解を促し、そこで描かれる世界にいち早く没入できることだろう。

これは児童誌と青年誌の優劣の話では無く、どっしりと腰を据えて漫画に浸りたい人には青年誌が合うかもしれないし、日々やることが多く漫画を読むことにあまりカロリーを使いたくない人には児童誌が合うかもしれない、というような相性と選択肢の話である。

そういった場合に、「児童誌である」という先入観で手を出さないのであれば少し勿体ないと筆者は思うので、ふと気になった時に上に挙げた作品たちを思い出して頂ければ幸いである。

あとできれば読んで語り合いたいね!

コナン映画の内容&ハードル批評

はじめに

コナン映画は近年ビッグタイトルになりつつある。

特にここ数年は興行収入の伸びが著しく、新規でコナン映画を観ようと思う人も増えているだろう。

しかし、国民的アニメの地位を獲得しているイメージのコナンだが、ドラえもんクレヨンしんちゃんと違い(クレしん映画の公開時期はコナン映画とよく被るので同時期に話題が上がることが多い)、コナンはストーリー物であるため原作の進行度合いが映画の内容に反映されることがままある。他の作品で例えるなら映画版ワンピースが立ち位置的に近いと思う。

コナン映画は冒頭で大体のあらすじと、その映画に必要な知識を説明してくれるとはいえ、最近は原作で長いこと描いていたストーリーの核心をさらっと一言や二言で片付けてしまうこともあり、「それはもったいないんじゃないか?」と思うことさえある。また、単純に映画のコナンしか観てない層には解らない要素も多々出てくるので、ある程度原作を履修した方が楽しめる映画が存在するのは間違いない。

そういう訳で、歴代コナン作品に対して、映画そのものの面白さに原作履修ハードルの低さを加味した評価をつけていきたい。

なお、独断・偏見・主観が多分に含まれるので注意。

 

(1)時計じかけの摩天楼

爆弾をしかけた犯人と爆破を阻止しようとするコナンの対決(あるいは新一と蘭の恋愛要素)に主題を置いているので、推理物というよりは刑事ドラマに近い。話自体はよく出来てるが、犯人の動機がひどすぎることでも有名。

爆弾の導線が二本、どっちを切ればいい?もある王道爆弾ストーリー。

コナン映画第一作ということもあり、原作履修ハードルは非常に低い。園子登場回(原作5巻)や少年探偵団結成回(原作6巻)までの知識で問題無い。ターボエンジン付きスケートボードも登場するのでそれも含めると、歩美ちゃん誘拐事件(原作9巻)まで。

なお、原作含めて白鳥刑事の初登場作品。彼はここから原作に逆輸入(原作21巻)され、後の映画作品にもほぼ毎回登場するキャラなため、この作品では容疑者の一人だが、先の話を知ってると全く怪しくなくなる。

全体:(推理:B、サスペンス:A、恋愛:A、アクション:B)

ハードル:極低

 

(2)14番目の標的(ターゲット)

前作に比べ、ちゃんと複数の容疑者から犯人を捜す推理物。しかし、一人を除く他の被害者を殺そうとする動機が理不尽なことで有名。これを受け入れられるかで多分評価が変わる。

前作同様、恋愛要素も盛り込まれているが、この作品では小五郎と英理の夫婦愛について特に比重を置いている。小五郎がかっこいい。

ワインの知識が増えるソムリエ映画。

原作履修ハードルは低く、英理登場回(原作11巻)までの知識で問題無い。

なお、原作2巻で1回しか出てこない伸縮サスペンダーが映画初登場する作品でもあり、後の映画作品にも頻出するため、覚えておきたい。

全体:(推理:B、サスペンス:A、恋愛:A、アクション:B)

ハードル:極低

 

(3)世紀末の魔術師

ロシアのロマノフ王朝の謎に迫る歴史ミステリー。実際の歴史に独自解釈やifを加え、ストーリーに上手く組み込んだ作品であり、歴史好きなら多分好き。映画公開当時未解明だった謎がその後現実で解明され、一部映画内容に現実と矛盾が生じることになったがそれを置いといても面白い。

相変わらず犯人の動機がひどい。

灰原、平次、和葉、高木刑事、怪盗キッドの映画初登場作品。怪盗キッドがメインの作品なのでキッド登場回(原作16巻)までの知識でも大丈夫だが、灰原はコナン作品全体の重要人物で後の映画作品にも必ず登場するので灰原登場回(原作18~19巻)はついでに履修したい(19巻は和葉初登場回も収録されている)。

キッドがコナンの正体を知ることになった作品であり、後の映画作品ではキッドがコナンの正体を知っている前提で登場する(この設定はいつの間にか原作にも逆輸入されている)。

全体:(推理:B、サスペンス:B、恋愛:A、アドベンチャー:A)

ハードル:

 

(4)瞳の中の暗殺者

話全体を通して新一と蘭の関係に焦点が当てられるので、二人の恋愛要素を描いた作品としては頭一つ抜けている。

推理物としてもよく出来ており、伏線やストーリーの組み方、演出等も高いレベルでまとまっている傑作。犯人の動機もちゃんと筋が通ってる。

空手はナイフより強い。

佐藤刑事の映画初登場作品。佐藤刑事登場は原作19巻だが、刑事周りの人間関係も押さえるなら白鳥刑事登場回(原作21巻)まで読んでおくといい。特別重要なキャラではないが千葉刑事も初登場。だが、彼はアニメから原作に逆輸入されたキャラで、彼が原作に登場するのは27巻、ちゃんと話に絡むようになるのは本庁の刑事恋物語4(原作33~34巻)辺りからで押さえようとすると少々ハードルが高い。

全体:(推理:A、サスペンス:A、恋愛:A+、アクション:B)

ハードル:

 

(5)天国へのカウントダウン

灰原(あるいは黒の組織)メインのストーリー。その分、新一と蘭の恋愛要素は少ない。犯人の起こした殺人事件と黒の組織の思惑が同時に絡むため、事件の印象は前作等と比べてやや薄くなる。犯人の動機がよくネタにされる作品であるが、声優の演技や演出も相まって自白シーンの迫力はかなりのもの。

灰原というキャラクターについて原作並みに掘り下げる作品。灰原好き必見の一作。

この辺りの作品からアクションが大分盛られてくる。コナンが3回ほど空中大ジャンプをする。

灰原にスポットを当てた作品であるため、広田雅美登場(原作2巻)と灰原登場(原作18~19巻)は必読。黒の組織の映画初登場作で、ジンとウォッカしか出てこないため、黒の組織の知識は最低限で問題ない。また、時計じかけの摩天楼のネタバレがある。

全体:(推理:B、サスペンス:A、恋愛:C、アクション:A)

ハードル:

 

(6)イカー街(ストリート)の亡霊

VR空間上の19世紀ロンドンを舞台に切り裂きジャックの謎を追う、アドベンチャー色の強い作品。歴史ネタ好きは好きかも。ホームズやモリアーティも登場する。

VR上で行われるデスゲームという要素(実質SAOとも言われてる)や、意思を持った人工知能が登場する等、色々時代を先取りした作品。コナン映画としては他作に比べかなり異色とも言える内容なので、人によって評価が分かれると思われる。

工藤夫妻の映画初登場作品。かなり内容にも絡むため、原作初登場回(原作5~6巻)は読みたい。それ以外の知識はほとんど必要無いので、ハードルは低い。

全体:(推理:B、サスペンス:A、恋愛:C、アドベンチャー:A)

ハードル:

 

(7)迷宮の十字路(クロスロード)

実在の京都の名所を回りながら宝探しをする作品。弁慶と義経が話に深く関わるため、その辺の歴史が好きな人は好きかも。

コナン映画で唯一、ガチの剣術アクションがある作品。コナン映画で唯一、犯人が刀と弓矢を凶器に使ってくる作品でもあり、アクションはかなり激しい。

舞台やアクションを和風で統一させたその絵面の綺麗さからか、ファンからの評価が非常に高い作品。しかし、犯人の動機がよくネタにされる作品でもある。

丸竹夷の手毬歌を憶えられる映画。

平次や和葉にスポットを当てた作品であるため、平次登場(原作10巻)と和葉登場(原作19巻)は読んでおきたい。この映画で初登場となる大滝警部も原作の和葉登場回で同じタイミングで登場する。

また、どこでもボール射出ベルトがこの作品から登場するため、冒頭で博士の発明品の説明はあるが、そこまで押さえるなら黒の組織との接触(原作37巻)まで読んでおくといい。

全体:(推理:B、サスペンス:A、恋愛:A、アクション:A)

ハードル:

 

(8)銀翼の奇術師(マジシャン)

空を題材にした作品。前半は空中アクション、後半は空中サスペンスになる。

後半で起こる事件は、推理パートこそ短いが動機もトリックも突拍子も無いものが多いコナン映画としてはかなりまとも。

終盤の展開がだいぶ無茶が過ぎるため、それを受け入れられるかで多分評価が変わる(この辺りの作品からピンチ状況からの解決法がとんでもになり始めるので、バカ映画としては楽しめるかもしれない)。

「バスト、ウエスト、ヒップのサイズは?」と訊く男がカッコよく見える映画。

怪盗キッドメインの作品なので、原作16巻までの知識で問題無い。灰原まで含めるなら原作18~19巻まで。刑事周りの人間関係も押さえるなら白鳥刑事登場回(原作21巻)まで。

全体:(推理:B、サスペンス:B、恋愛:B、アクション:B)

ハードル:

 

(9)水平線上の陰謀(ストラテジー)

前作が空に対して、海を題材にした作品。話が終始豪華客船の上で進む。かなりタイタニックを意識している節がある映画。

小五郎が活躍する作品。小五郎好きは必見。

小学生相手のかくれんぼで本気を出す高校生。

初登場のキャラや特別なキャラも居ないので、白鳥刑事登場(原作21巻)までの知識で問題無い。

全体:(推理:B、サスペンス:B、恋愛:B、アクション:B)

ハードル:

 

(10)探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)

シリーズ10作目を記念したオールスター作品として銘打たれた映画。流石に一部キャラは登場しないが、多くのレギュラーキャラが登場する豪華な作品。登場人物が多い割にちゃんとみんな活躍するのもポイント。

近年のコナン映画のキャラクター物路線の先駆けともいえる。

なお、光彦の声優である大谷育江が当時休業中だったため、この映画だけ光彦の声優が違う。

犯人側の人物がクズしかいない。

初登場キャラが多く、平次や和葉の父である平蔵と銀司郎、横溝警部(弟)、白馬探は初登場かつ役回りのあるキャラなため、横溝警部(弟)が登場する原作34巻までは押さえておきたい(白馬は元々まじっく快斗の登場人物なので余裕があればそっちも)。

高木刑事と佐藤刑事の関係がかなり進展しているため、揺れる警視庁1200万人の人質(原作36~37巻)や本庁の刑事恋物語5(原作40巻)辺りも読んでおくと違和感が無い。

全体:(推理:B、サスペンス:A、恋愛:C、アクション:A)

ハードル:

 

(11)紺碧の棺(ジョリー・ロジャー)

実在の女海賊アン・ボニーとメアリ・リードが遺した財宝を追う、アドベンチャー色の強い作品。

蘭と園子の友情に焦点を当てた映画。そこに需要があるかはさておき。

サメ映画。

初登場のキャラや特別なキャラも居ないので、ハードルは低い。白鳥刑事登場(原作21巻)までの知識で問題無い。

全体:(推理:C、サスペンス:A、恋愛:B、アクション:B、アドベンチャー:A)

ハードル:

 

(12)戦慄の楽譜(フルスコア)

音楽を題材にした作品。

映画オリジナルキャラの一人がかなり出張る作品であり、このキャラを好きになれるかで多分評価が分かれる(しかも第一印象が悪い)。

コナン映画としてはアクションが控えめ。人によっては物足りなさを覚えるかもしれない。

絶対音感映画。

初登場のキャラや特別なキャラも居ないので、ハードルは低い。白鳥刑事登場(原作21巻)までの知識で問題無い。

全体:(推理:B、サスペンス:B、恋愛:B、アクション:C)

ハードル:

 

(13)漆黒の追跡者(チェイサー)

黒の組織メインの作品。映画オリジナルキャラに、ファンの間で黒の組織屈指の有能と言われるアイリッシュが登場する。また、天国へのカウントダウンとはまた別の方向で派手に犯行に及ぶため、本編では証拠を残さず犯行を遂行するはずの黒の組織に火力で雑に制圧する集団のイメージが付いたのは大体この映画(と後に公開された純黒の悪夢)が原因。

警察関係者も多く登場する作品で、オールスター映画と銘打っていた探偵たちの鎮魂歌並みに登場人物が多い。キャラクター物としては満足できる。

なお、この作品からゲスト声優が演じるキャラがストーリーに深く関わるようになる。良いか悪いかはさておき。

黒の組織からベルモットキャンティ、コルンが映画初登場。警察関係者は松本管理官、横溝警部(兄)、大和警部などが映画初登場。探偵たちの鎮魂歌でモブ出演していた山村刑事も本格登場する。このうちベルモットは重要キャラのため、原作42巻までは必読。黒の組織のボスのメールアドレスが判明しているので、映画冒頭で説明はあるものの、46巻も読みたい。キャンティ、コルンについて押さえるならブラックインパクト~赤と黒のクラッシュ(原作48~59巻)のエピソードを一気に読みたい。大和警部は原作59巻で初登場。松本管理官は原作64巻で掘り下げられるエピソードがあるので、ここまで読んでおけば映画中に解らないネタは無い。

全体:(推理:B、サスペンス:A、恋愛:C、アクション:A)

ハードル:

 

(14)天空の難破船(ロスト・シップ)

定期的にあるキッドメイン映画。

終始飛行船の中で物語が進む作品。かなり早い段階から事件が起こり、その緊迫感が二転三転する話の展開と共に終盤まで続くのでサスペンス物としては頭一つ抜けている。

ちなみにこの作品から小五郎の声優が変わっている(この作品では台詞が少なめだが)。

次郎吉が映画初登場するため、次郎吉登場(原作44巻)は読んでおきたい。また、コナン映画で初めてキッドの目的について示唆される作品であるため、まじっく快斗を読んでおけば疑問は無い。

どこでもボール射出ベルトがこの辺りの作品から特殊な使われ方をしてくるので、黒の組織との接触(原作37巻)を読んでおくといいかもしれない。

全体:(推理:A、サスペンス:A+、恋愛:B、アクション:B)

ハードル:

 

(15)沈黙の15分(クォーター)

雪山映画。

この映画の犯人が起こすとある犯行は、コナン映画の中でもトップクラスの被害規模を誇る。おまけに動機が極めて自己中心的なものなので、犯人のクズ度合いで競うなら優勝筆頭。

この辺りの映画から従来では終盤でやるような派手なアクションを序盤でも挟むようになった。

小林先生の映画初登場作品。重要ではないが、ある人物との関係が進展しているので、原作66~68巻を読んでおきたい。

全体:(推理:B、サスペンス:A、恋愛:B、アクション:A)

ハードル:

 

(16)11人目のストライカ

サッカー映画。

Jリーグ20周年記念プロジェクトとのコラボ作品であるためか、随所に大人の思惑が見える作品。

コナン自身が大好きなサッカーが題材だということもあるが、コナンの性格が他作に比べ熱血味を増している節がある。また、少年探偵団との友情やチームプレイもクローズアップされており、従来作に比べ対象年齢が下がったような印象を受ける。

ポアロの梓が映画初登場する。原作では元々モブキャラだったのがアニメのオリキャラと統合されて原作に逆輸入されたキャラであり、本格的に登場するのは原作43巻から。とはいえ、知らなくてもそこまで問題は無い。また、サッカー選手の比護が映画初登場。こちらは本編のエピソードに触れるので原作34巻を読んでおきたい。

全体:(推理:B、サスペンス:B、恋愛:C、アクション:A)

ハードル:

 

(17)絶海の探偵(プライベート・アイ)

スパイ映画。イージス艦を舞台に話が展開され、コナンの犯罪すれすれ行為や際どいネタが出てくるため色んな意味でハラハラする作品。

イージス艦の中と外の両サイドで事件の捜査が進むのも特徴。

完全に余談だが和葉の声優である宮村優子が当時患っていた病の影響か、和葉の声がかなり違う印象を受ける。後の作品で再登場した際はちゃんと元に戻っている。

初登場となるキャラはおらず、ハードルは低め。灰原や和葉の登場する原作19巻までの知識だけでも大丈夫。

全体:(推理:B、サスペンス:B、恋愛:B、アクション:B)

ハードル:

 

(番外)ルパン三世VS名探偵コナンTHE MOVIE

二度目となるルパンとコナンのコラボ作品。

TVスペシャル版が蘭メインの話だったためか、この映画では灰原の出番が多い。

また、TVスペシャル版はルパン寄りの世界観だったのに対し、この映画はコナン寄りの世界観になっている。そのため、TVスペシャル版に比べてがっつりとした推理パートがある。

非常に登場人物が多いお祭り映画。探偵たちの鎮魂歌や漆黒の追跡者並みにキャラが多い。キャラクター物としても非常に満足できる。

まず前作であるTVスペシャル版の直接的な続編になり、話にもかなり関わってくるため、TVスペシャル版は視聴必須。また、本編映画に先駆けてFBIのキャラが登場するため、最低でも原作42巻までの知識が必要。

最もハードルが高いところで言うと、重要キャラではないが、婦警の三池が初登場しており、彼女の事情を知るには原作71巻を読む必要がある。

全体:(推理:B、サスペンス:B、恋愛:C、アクション:A)

ハードル:

 

(18)異次元の狙撃手(スナイパー)

タイトル通りスナイパー映画。

映画初登場となる世良やFBI関係者等、多くのキャラが登場する。キャラクター物としては充分満足できる。これ以降のコナン映画もかなりキャラ物に振り切るようになる。

リスニング教材のような丁寧な英語がたくさん聞ける映画。

ハードルの高さとしてはコナン映画屈指。というか特殊。というのも、登場人物の多さもさることながら、この映画自体がミステリートレイン~緋色シリーズ(原作78巻~85巻)の間に公開された映画であり、ある登場人物の正体を原作より先出しする(原作でもほぼ確定はしていたが)というのが、この映画最大の衝撃になる構造になっている。そのため、78巻より前の知識では映画内容が原作のネタバレになり、85巻より後の知識では映画のインパクトが薄れてしまうという、当時リアルタイムで追っていた人間でないと最大限に楽しむのが難しい映画になっている。

また、花火ボールがこの映画で初登場。以降の映画では特に説明も無く、コナンのサッカーボールが閃光と共に爆発するようになる。

全体:(推理:B、サスペンス:B、恋愛:C、アクション:A)

ハードル:極高(特殊)

 

(19)業火の向日葵

定期的にあるキッドメイン映画。ゴッホの絵画ひまわりの8枚目(芦屋空襲で焼失した2枚目の模写)が発見されたというifから始まる芸術ミステリー。作中で充分説明されるので、ゴッホのひまわりについて詳しくなくても問題無い。

題材自体は面白く、それぞれのひまわりにまつわる話も絡めた謎解きも登場し、芸術ミステリーとしての出来は良い。

ただ、作中で起こる事件周りの描き方が(元々3時間内容の脚本から1時間分削ったとされるが故か)かなり描写不足で雑な印象を受ける。

久しぶりに犯人の動機がひどい。

気圧が上がったり下がったりする映画。

次郎吉が登場するので次郎吉登場(原作44巻)は読んでおきたい。また、次郎吉のボディーガードである後藤が登場。知らなくても特別問題無いが、原作にも登場するキャラである(原作64~65巻)。また、とある人物が話にかなり絡むため、まじっく快斗を読んでおくことを推奨する。

全体:(推理:B、サスペンス:B、恋愛:B、アクション:B)

ハードル:

 

(20)純黒の悪夢(ナイトメア)

黒の組織メインの作品。過去作のように特定の事件の陰で黒の組織が動いているという形式ではなく、黒の組織そのものを追う映画。映画オリジナルキャラが極端に少なく、キュラソーと風見以外は話にもほとんど絡まない(黒の組織との対決を描くにあたって余計な登場人物が少ないとも言える)。

黒の組織、警察関係者、FBI関係者など、レギュラーキャラが多く登場する作品。特に赤井と安室が同時に関わる現状唯一の映画であり、面子の豪華さはトップクラス。

推理要素は少ないが、その分アクションを盛りに盛った映画。

緋色シリーズ(原作85巻)以降の話であり、そこまでの知識は必須。また、黒の組織のラムに関して触れられる映画。冒頭で説明はされるが、ラムの容姿の情報が出てくる原作86巻は読んでおきたい。

なお、公安の風見はこの映画のオリジナルキャラだったが、後に原作にも逆輸入される(原作94巻)。

全体:(推理:C、サスペンス:A、恋愛:C、アクション:A+)

ハードル:極高

 

(21)から紅の恋歌(ラブレター)

平次と和葉メインの作品。特に和葉に関しては主役級の役回りとなる。新一と蘭がメインではないが、恋愛色はかなり強め。

この辺りの映画から灰原の雑用スペックが跳ね上がる。

かるた映画。実質ちはやふる

ハードルは地味に高い、というか特殊。この映画は原作91~92巻の間に公開された映画(91巻発売が2017/4/12、映画公開が2017/4/15なので91巻発売直後)であるが、紅葉は原作91巻が初登場でアニメ化されておらず、本編アニメよりも先に映画に登場することになった。執事の伊織は原作92~93巻で初登場するため、こちらはアニメどころか単行本よりも映画の方が早い。サンデー本誌の方は映画より先なので、原作が初出のキャラではある。この二人はコナン達との面識は無く(一部顔は合わせているが)、この映画が実質初対面になる。紅の修学旅行(原作94~95巻)で再登場した際は面識があることになっているので、この映画を観るタイミングとして適切なのは、原作93巻読後になる。とはいえ、原作でもあまりクローズアップされておらず、映画で初めてちゃんと掘り下げられたキャラであるため、そこまでの原作履修は必須ではない。新一と蘭の関係が進展しているため、ロンドン編(原作71~72巻)を読んでおきたいくらい。

全体:(推理:B、サスペンス:B、恋愛:A+、アクション:B)

ハードル:高(特殊)

 

(22)ゼロの執行人

安室メインの作品。安室というキャラを最大限に活躍させた映画。安室好き必見の一作。

複雑な警察組織の構造とそれが密接に関わるシナリオ、また脚本家が同じことから、実質相棒とも言われる(絶海の探偵、業火の向日葵、純黒の悪夢も同じ脚本家ではある)。

公安がヤバい組織であることはよく解る映画。

安室の正体を知っていることが前提の映画になるため、緋色シリーズ(原作85巻)までの知識は必須。また、警察関係者として黒田が映画初登場。原作初登場~管理官就任(原作86~87巻)は読んでおきたい。

全体:(推理:B、サスペンス:B、恋愛:C、アクション:A)

ハードル:極高

 

(23)紺青の拳(フィスト)

キッドメイン作品、であると同時に園子と京極がメインの作品でもある。

園子と京極の恋愛模様をクローズアップすると共に、コナン映画では久しぶりに新一と蘭の関係についても描く。恋愛色は強め。

実在のシンガポールの名所が舞台として数多く登場するのも特徴。知っていれば楽しいかも。

アクション盛り盛り映画。特に格闘描写は歴代コナン映画の中でも最も多い。

ゼロの執行人の回想でちらっと出たり、名前だけは過去作でも出ていた京極が本格登場。キッドと既に面識があるため、怪盗キッドVS京極真(原作82巻)を読んでおきたい。また、新一と蘭の関係が進展しているため、紅の修学旅行(原作93~94巻)も出来れば読んでおきたい。

全体:(推理:B、サスペンス:B、恋愛:A+、アクション:A+)

ハードル:

 

(24)緋色の弾丸

公開延期中の映画。

赤井ファミリーが総登場するのがウリの映画だが、赤井ファミリーの面子がコナン本編で家族だと判明したのは、さざ波の魔法使い(原作92巻)が初であり(それまでにも示唆はされていたが)、映画の内容は判らないが各キャラにもそれぞれ独立した背景があるため、原作92巻までの知識が恐らく必須。

ハードル:極高

 

総括

近年、特に赤井と安室に関してはキャラ人気が先行して、キャラ設定を知ってるものとして扱っている風潮がある(実際、公式ですら映画で登場する際も冒頭のキャラ紹介で簡単に済ますだけである)が、現98巻にも及ぶコナンの膨大なエピソードの中から、その設定が明かされるまでの過程のストーリーをどれだけの人間が把握しているかはかなり疑問なところがある。

赤井と安室は敵か味方かすら解らなかった時代から長い積み重ねを経ての現在があるため、その核心だけ受け取って新しい話に入ってきてしまうのは(98巻のハードルがきついとはいえ)もったいないと感じる。

もちろん、先の展開を知った上で過去のエピソードを読む楽しみ方もあるだろう(ワンピースで誰が仲間になるかを知った上で東の海編を読み始めた人も多いと思う)が、これからコナンに入る人にも、ジョディ先生の正体や、来葉峠の謎や、バーボンは誰?などの当時大いに盛り上がったエピソードで同じように盛り上がってもらいたいと、20年来のファンとしては思うわけである。

来年の緋色の弾丸公開までいっぱい時間あるからね!